Summary
振動や音では検知が難しい回転子(ロータバー)の異常。過去にロータバーのゆるみで整備を経験したこの高圧電動機では、「分解しなければ回転子の状態が分からない」ことが長年の課題でした。T-MCMAの電流解析で回転子関連パラメータを診断した結果は「良好」——そして実際の分解整備でも回転子の状態は問題なく、診断の正しさが実機で裏付けられました。異常の検知だけでなく、「健全であること」を分解せずに確認できることを示した鉄鋼プラントの事例をご紹介します。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 鉄鋼 |
| 対象設備 | コンプレッサー駆動用 高圧電動機 |
| 診断対象 | 回転子(ロータバー)の健全性確認 |
| 従来手法の限界 | 回転子の異常は振動や音では検知が難しく、分解しないと状態を確認できない |
| 着目したパラメータ | Lpole、Lx1、Lx2(回転子関連の診断パラメータ) |
| 診断結果と検証 | 整備前後ともすべて良好レベル=「問題なし」と診断。分解整備でも回転子の良好な状態が確認され、診断と一致 |
| 効果 | 分解せずに回転子を点検可能/モータ状態の定量評価による突発停止の抑制 |
導入の背景・課題:回転子の状態は、分解しないと分からない」
対象設備は、窒素の圧縮を担うコンプレッサーの駆動用高圧電動機です。10年ほど前にモータを分解した際、回転子のロータバーにゆるみ箇所が多数確認され、整備を実施した経緯がありました。
以降、回転子の状態管理には次の課題を抱えていました。
- 回転子の異常は振動や音では検知が難しく、運転中に状態を把握する手段がない
- 状態を確認するにはモータを分解するしかなく、時間もコストもかかる
- 状態が分からないまま整備時期を迎えるため、整備要否を判断する材料がない
何か診断方法はないかと探していたところ電流診断を知り、T-MCMAによる回転子の状態確認を実施。
予定されていた整備に合わせて、整備前後の診断を行いました。
診断と検証の流れ:整備前診断 →「問題なし」→ 分解整備で実証
STEP1 整備前の診断:回転子関連パラメータはすべて「良好レベル」
整備前の計測では、回転子に関連する診断パラメータ(Lpole、Lx1、Lx2)がすべて良好レベルであり、悪化の傾向も見られませんでした。この結果から、回転子の状態は問題なしと診断しました。
STEP2 分解整備で「良好」の診断が的中
その後、整備でモータを分解したところ、回転子の状態に大きな問題はなく、電流診断による「問題なし」の判断が実機で裏付けられました。異常を当てるだけでなく、「健全であること」も正しく診断できることを示す結果となりました。
STEP3 整備後の診断:傾向変化なし、継続監視のベースラインを確立
整備後の計測でも、Lpole・Lx1・Lx2に整備前からの傾向変化はなく、良好〜許容レベルを維持していました。整備前後の値が揃ったことで、今後の傾向管理の基準(ベースライン)が確立され、継続的な状態監視の体制が整いました。

診断のポイント:回転子は「電流診断が最も得意とする部位」
ロータバーのゆるみや折損といった回転子の異常は、振動や音への現れ方が小さく、従来手法では検知が困難な代表的部位です。一方、回転子の異常は電動機の電流に直接的な変化を生じさせるため、電流解析とは相性の良い診断対象です。本事例ではLpole・Lx1・Lx2という回転子関連の複数パラメータを組み合わせて評価することで、分解せずに回転子の健全性を判断しました。
導入効果:Before / After
| 導入前 | 導入後 | |
|---|---|---|
| 回転子の状態確認 | 分解しないと分からない | 運転したまま電流解析で点検可能 |
| 異常の検知 | 振動・音では捉えられない | Lpole・Lx1・Lx2で回転子の状態を監視 |
| 整備の判断 | 状態不明のまま整備時期を迎える | 診断結果を整備要否の判断材料にできる |
| 突発停止リスク | 兆候を掴む手段がない | 定量評価により突発停止を抑制 |
分解せずに回転子を点検できる
モータを分解することなく、運転状態のまま回転子の健全性を確認できました。分解点検にかかる時間・コスト・停止期間を伴わずに状態を把握できることは、大型の高圧電動機ほど大きなメリットになります。
「健全である」ことを確認できる価値
本事例の診断結果は「問題なし」であり、分解整備でもその通りであることが確認されました。異常の検知だけでなく健全性の証明ができることで、将来的には状態に基づいて整備要否を判断する(不要な分解整備を省く)運用への展開が期待できます。
突発停止の抑制
過去にロータバーのゆるみを経験した機器のモータ状態を定量的に評価できることで、異常の兆候を早期に捉える体制が整い、突発停止の抑制につながっています。
今後の展望
他の機器への電流診断の展開
回転子という「振動では見えない部位」を非分解で診断できた本事例を足がかりに、他の重要機器へも電流診断の適用を拡大していく計画です。
この事例が参考になる方
- ロータバーのゆるみ・折損など、回転子の状態管理に課題を抱えている方
- 大型モータの分解点検のコスト・停止期間を削減したい方
- 時間基準の分解整備から、状態に基づく整備判断へ移行したい方

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