Summary
複数台の同型海水ポンプのうち、どの機器でエロージョンが進行しているのか——振動診断では兆候が現れず、開放点検まで分からなかった損傷を、T-MCMAの(KI)で運転中に特定。部品手配のリードタイム短縮と在庫管理の最適化を実現した化学プラントの事例をご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種 | 化学 |
| 対象設備 | 軸流ポンプ |
| 異常事象 | キャビテーション(流体異常)に起因するエロージョン |
| 従来手法の限界 | 振動診断ではトレンドに変化が現れない |
| 着目したパラメータ | KI |
| 効果 | 異常機器の特定/部品手配時間の短縮/在庫管理の最適化 |
導入の背景・課題:「どの機器が損傷しているのか」が分からない
対象設備は、海水の送水に使用している軸流ポンプです。同型の機器が複数台設置されており、定期的に振動診断を実施していましたが、トレンドに変化は見られませんでした。
ところが、開放点検の際に一部の機器でエロージョンによる損傷が確認されました。振動に兆候が現れないため、次のような課題が残っていました。
- 複数台の同型機のうち、どの機器で損傷が進行しているのか運転中に判別できない
- 損傷の発見が開放点検時となるため、整備部品の手配が後手に回る
- 損傷機器を特定できないため、予備部品を余裕を持って抱えざるを得ない
そこで、振動では捉えにくい流体異常の検知にも有効な電流解析T-MCMAを導入し、海水ポンプの状態監視を開始しました。
検知から診断まで:KIの悪化 → 波形確認 → キャビテーションと判断
STEP1 KIが注意レベルに悪化
監視対象のポンプの1台で、電流情報量診断のパラメータであるKIが注意レベルまで悪化していることを検知しました。

STEP2 電流時間波形に「周期性のない脈動成分」を確認
KIの悪化を受けて電流時間波形を確認したところ、脈動成分が認められました。この脈動には周期性が見られないことがポイントです。

STEP3 流体異常(キャビテーション)と診断
軸受損傷やミスアライメントなどの機械的な異常であれば、回転数や軸受の特徴周波数に応じた周期性が現れます。周期性のない脈動であることから、キャビテーションの発生(流体異常)によるものと判断しました。
キャビテーションで生じた気泡の崩壊はインペラ等の壊食(エロージョン)を引き起こします。つまりKIによる流体異常の検知が、エロージョンが進行している機器の特定に直結します。
【関連記事】ポンプのキャビテーションとは?発生原因と確実な対策・NPSHの基本まで解説
STEP4 開放点検で診断結果を実証
診断結果を受けて当該ポンプの分解整備を実施したところ、インペラにはエロージョンによる壊食が、シャフトには摺動痕が確認され、電流解析による診断の妥当性が実機で裏付けられました。


シャフトの摺動痕は、流体異常が機械的な劣化にもつながっていることを示しています。流体異常を早期に検知することが、二次的な機械損傷の抑制にも有効であることを示す結果となりました。
導入効果:Before / After
| 導入前 | 導入後 | |
|---|---|---|
| 損傷機器の特定 | 開放点検まで分からない | 運転中にKIで特定可能 |
| 部品手配 | 損傷発見後に手配(後手) | 事前に計画・手配し、リードタイムを短縮 |
| 部品在庫 | 全機器分を余裕を持って確保 | て確保対象機器を絞り込み、在庫を最適化 |
エロージョン発生機器の運転中特定
複数台存在する同型の海水ポンプの中から、エロージョンが発生している機器を運転中に特定できるようになりました。振動診断では変化が現れない損傷に対しても、電流解析で異常の兆候を捉えられています。
整備部品手配のリードタイム短縮と在庫最適化
異常が進行している機器を事前に把握できるため、開放点検を待たずに整備計画を立て、必要な部品を前もって手配できます。整備対象と時期の見通しが立つことで、予備部品を過剰に抱える必要もなくなり、在庫管理の最適化に活用しています。
今後の展望
流体異常に伴う機械的劣化のトレンド監視
流体異常の検知にとどまらず、それに伴って進行する機械的異常(エロージョン等)の劣化度合いをトレンドとして監視し、整備時期の最適化につなげていく方針です。
この事例が参考になる方
- 同型の回転機械を複数台運用しており、異常機器の絞り込みに課題がある方
- 振動診断を実施しているが、流体異常(キャビテーション等)の検知に限界を感じている方
- エロージョン損傷が繰り返し発生し、部品手配や在庫管理が後手に回っている方
関連リンク
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